女子教育がアジアを救う-アジア女子大学

2008年、バングラデシュのチッタゴンに創立されたアジア女子大学(Asian University for Women: AUW)は、南アジアおよび東南アジアの農村部や難民地域、貧困地域に住む才能を持っている女性たちに高等教育を提供し、素晴らしいリーダーを輩出している。大学は世界からの寄付で運営され、総長はブレア元英国首相の妻のシェリー・ブレアさん。日本でも、ウーマノミクスを提唱したキャシー松井さんをはじめ、福岡出身の著名なビジネス書翻訳家の関美和さんといった資金集めに情熱を注ぐ女性たちと、AUWの活動に賛同する人たちや企業が多数関わっている。安倍昭恵さんも熱心な応援者のひとり。

毎年開催されるファンドレイジング(寄付金集め)のセミナーが、3月23日、東京の六本木のアカデミーヒルズであり参加してきた。私が参加するのは今回で2回目だが、今年はバングラデシュ人のシャミーン・アクティさんとベトナム人のタラン・ティ・フォン・ギャンさんの2人の卒業生が来日し、パネリストとしてAUWの経験がいかに自分の人生を変えたかを、流暢な英語で語ってくれた。入学前はほとんど英語を話せなかった彼女たちが、15カ国から集まった学生たちと全寮制の大学生活を通して、リーダーとして成長していった軌跡。大学で得たものでもっとも重要だったものはという問いに、彼女たちが共通して話したのは、「クリティカルシンキング(客観的で健全な批判精神にもとづいた論理的な思考法)」。 情報を鵜呑みにしない。多面的に考える。根拠を確認する。そう、「考える力」こそ、大学で学ぶ何よりも重要なことで、リーダーに欠かせない力だとつくづく思う。多様な文化を理解し、自分を表現し、相手を巻き込むための英語力とクリティカルシンキングを重視するのは、まさにAUWがリベラルアーツ=自由人として生きるための素養を学ぶ大学だからだ。

AUW

現在、母国で活躍しているシャミーンさんもギャンさんも、いつかは大学院に進み、さらに国や地域のためになる人材になりたいと意欲的だ。NHKの朝ドラ「あさが来た」の人気もあって、女子教育が注目されているが、特に開発途上国における女子の教育への投資は、最大の投資効果がある投資だと言われている。日本は教育を受ける機会や教育へのアクセスという意味では、科学技術分野への女子の進学が少ないといった課題はあるものの、性別による格差はかなりなくなったと言える。むしろ、貧富の差が教育格差を生み、貧困の再生産につながっていることが課題である。一方、高い教育を受けた女性たちが、社会でその力を発揮できていないことが、世界から見ても大きな損失なのだ。

セミナーの特別講演は、「選択の科学」というビジネス書のベストセラーの著者、コロンビア大学ビジネススクールの経営学のシーナ・アイエンガー教授だった、。あの白熱教室に登場するほど人気の教育者でもある。インドからの移民で厳格なシーク教徒の両親に育てられ、10代に網膜の病気で視力を失った彼女は、研究者になることを選択し、ペンシルバニア大、スタンフォード大に進む。

選択の科学

シーナ・アイエンガー教授の講演を聴いていると、彼女がまったく視力がないことをすっかり忘れてしまう。何よりもビジュアルでインパクトのあるスライドを使ったスムーズなプレゼンテーション。よどみなく、しなやかに、そして確かな意志を伝える張りのある声。聴衆が共感して頷く場面でも、彼女にはそれが見えない。「何か音を出してくれないと、私にはわからないのよね」とチャーミングにユーモアを交えて訴えたとき、聴衆ははっと思い出すほどだ。質問を投げかけるときに、「どうしても身体を動かしたい人は挙手でもいいけど、できれば手を叩いて知らせてね」とも。アイエンガー教授との出会いは、親と一緒に参加していた中高生や大学生には、身体が震えるほどの体験であったろう。

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アイエンガー教授はより良い選択をするための四つのCについて話してくれたが、Cut、Concretize、Categorize、Conditionの中でも、最初のステップの「Cut」すなわち、「小さな選択に時間を費やすことなく、自分にとって重要な選択に時間をかけろ」というメッセージが最も響いた。選ぶという行為を何の選択に時間を使うかをよく考え、自分にとって重要な選択に時間をかけろということ。まさに「Choosy about Choosing(選択することにこだわる)」だ。あなたは、毎日、いくつの選択をしていますか?